●雪崩対策技術の概要

雪崩対策とは
 雪崩対策には,ハード対策とソフト対策があります(図1参照)。ハード対策は様々な施設により,雪崩の発生を防止したり,発生した雪崩の流下を阻止または誘導したりするものであるのに対して,ソフト対策は雪崩の発生を予知し,被害を回避するために危険区域図を作成し,それに基づき集落での警戒・避難体制の整備や土地利用の制限を行ったり,道路での通行止めを実施したりするものです。膨大な数の雪崩危険箇所に対して防災対策を行う上で,ハード対策とソフト対策とを適正なバランスで組み合わせた統合的な対策を実施していくことが必要となります(文献1)。
 雪崩防災対策を行うにあたっては,対象領域を調査する必要があります。その調査項目や検討プロセスは集落保護を目的としたものも,道路に対するものも基本的には変わりません。しかし,集落保護の雪崩対策は,民家や公共建築物を保護し,人的被害の回避を優先するものであり,道路などの雪崩対策はその施設と機能の維持を目的としているため,対策自体は変わってきます(表1参照)。

雪崩調査概要

1.雪崩発生予測のための調査

 雪崩の発生予測には,場所・時間・規模の3要素の予測があります。雪崩の発生には地形条件・気象条件・人為的条件などが互いに絡み合いながら関わっています。そのため,先に述べた3つの要素(場所・時間・規模)を全て的確に予測することは困難ですが,それぞれの要素について表2のような予測が行われます。
2.雪崩災害調査
 雪崩災害の現地調査は,雪崩の痕跡がその後の降雪で覆われたり,雪質の変化が起きる前に,発生後,できるだけ早く積雪の状況(積雪深・断面や雪質,すべり面観察など)や雪崩全体の把握などの調査を実施します。しかし,雪崩災害発生時には,多量の降積雪や悪天候で現場に到着するのに時間が掛かったり,調査時間にも制限があるので,悪条件の中では二次災害に注意しながら必要最低限の項目を手際よく実施しなければなりません。
3.対策施設設計のための調査
 この調査の目的は,路線沿いの雪崩発生危険斜面の把握と対策施設の必要度の判定,対策施設の計画立案の資料を得ることです。まず,既存資料で概略的な調査を行い,更に詳しい調査が必要な場合は雪崩危険斜面に絞って詳細調査を行います。しかし,この対策施設計画の調査は,確立された調査要領があまりありません。このため,過去の多くの対策事例の経験から導き出された方法が採用されています。
対策施設の計画にあたっては,雪崩災害を防止するために最も合理的で経済性を考慮しなければなりません。このためには調査の際に雪崩の種類を考慮し,対策工の機能を熟知した上で実施することが必要となります。

雪崩対策
 雪崩の対策には図2に示すように多くの工法があります。この中から最適な工法を選定するには様々な条件や経済性・施工性・メンテナンスの簡易性などを考慮した上で総合的に比較検討して決める必要があります
 典型的な雪崩地を図3に示します。雪崩地は,発生区,走路,堆積区の3区から構成されますが,実際には走路が短くて発生区と堆積区が直結している場合,数カ所の発生区から成る場合など様々です。 以下に,発生区・走路・堆積区別に一般的に適用できる対策工を示します。個々の場所に最も適した対策工を選定するには,様々な条件を考慮する必要がありますが,最終的には,施工性および経済性を検討し,必要に応じて景観を考慮して決定します。
 
@発生区
 発生区は雪崩の発生を防止することが主目的なので,雪崩の種類によって構造物が異なります。例えば,表3に示すように,全層雪崩であれば雪崩予防柵全てが検討対象ですが,表層雪崩では半分以上が対象となりません。
 
 A走路
 走路で使用される対策工は,誘導工・減勢工・防護工です。誘導擁壁・誘導柵・誘導堤・誘導溝は雪崩が防護物に到達するのを防ぐために雪崩の進路を変えるものです。雪崩割りは橋梁の橋脚,トンネル口や鉄塔などに用いられます。
B堆積区
 堆積区では,主として阻止工が用いられます。防護柵・防護擁壁は斜面勾配がおよそ20度以下の地点に設置されますが,その際には,雪崩を堆積させるのに十分な堆積場所が必要です。

引用文献・参考文献
1) 除雪・防雪ハンドブック(防雪編),社団法人 日本建設機械化協会・社団法人 雪センター,pp.97-98,pp.120-121,pp.143-145,pp.166-171,2005。
2) 新編防雪工学ハンドブック,社団法人 日本建設機械化協会,森北出版,pp.157-165。